昭和41年(1966年)、奈良工業高等専門学校硬式野球部は産声を上げました。以来60年、時代の荒波に揉まれながらも部は脈々と命脈を保ち続け、今日ここに創部60周年を迎えることができました。
振り返れば、私たちの学生時代はグラウンドが荒れ、道具も乏しく、練習時間も決して十分ではありませんでした。それでも白球を追う情熱だけは持ち合わせていました。「不完全なものを世に出すな!」——社会に出てから叩き込まれたその言葉は、野球においても同じであります。手を抜いた守備、中途半端な一打席が試合を決することになります。技術者として歩んだ半生で痛感させられた「妥協の代償」を、私はグラウンドでも幾度となく思い知らされました。
本誌は単なる記録集ではない。60年の歴史を振り返りながら、次の世代に何を手渡すかを問う書であります。天理・智弁という高い壁があります。しかし奈良高専には、理工系の知性という誰も持っていない武器があり、その武器をどう使うか——それこそが次の60年への問いとしたい。
在校生諸君の健闘を心より祈念し、OB一同が変わらぬ支援を続けることをここに誓う。
会長の挨拶に続き、一言申し上げる。
私の卒業は、昭和51年(1976年)第1次オイルショックによる不景気の真っただ中であった。大手企業の採用中止が相次ぎ、不遇のスタートと言わざるを得なかった。しかしそれが今となっては「人生塞翁が馬」となり、あの逆境があったからこそ、自分の足で立つことを教えられた。
野球部での日々も同じで、負け試合の数だけ強くなれたはずで、あの経験が社会人生活の原点といっても過言ではない。「やりきる執念がなければ、運も縁も活かせない」これは野球でも人生でも変わりない真理だと思っている。
本誌の編纂にあたり、諸先輩から現役部員に至るまで多くの方々のご協力をいただいた。特に長年にわたり休日を返上して指導に当たってくださっている、西前竜一監督、内田眞司部長をはじめとする指導者の皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げる。
60年の歴史は重い。しかしその重さは誇りでもある。次の世代がその誇りを受け継ぎ、いつの日か県大会の頂点に母校名が刻まれる日を、OB一同心待ちにしている。